画面の上では、一瞬でした。
今、工房ではこれまで作ったことのない「八角形」のものづくりに挑戦しています。
八角形なんて、これまで考えたことも、作ったこともありません。
それぞれの角度をどうすればいいのか。
まずはCADで作図するところから始まりました。
やってみると驚きました。
CADなら寸法を入力すれば、きれいな八角形が一瞬で画面に現れます。

「便利なもんやなぁ」と感心したのも束の間。
本当に難しいのは、ここからでした。
画面の上ではぴたりと合っている八つの辺も、それを実際に桐の木で作るとなると、そう簡単にはいきませんでした。
八枚の部材をすべてCADの示すサイズに加工し、
紐で締めてみるのですが、
どうしても、わずかな誤差が生じる。

削って、合わせて、また調整する。
何度も何度も微調整を繰り返しました。
考えてみれば、難しくて当然なのかもしれません。
私たちは桐箪笥を作るのと同じ精度で、この小さなものを作ろうとしているのですから。
求めるのは、ミリ以下の精度です。
CADがどれほど便利になっても、最後に頼りになったのは、これまで積み重ねてきた経験でした。
ほんのわずかな狂いを、どこで、どれだけ調整すれば八つの角がきれいに納まるのか。
数字だけでは答えが出ないところで働くのが、30年の仕事の中で身についた、いわば「職人の勘」のようなものです。
初めて作る形なのに、不思議とこれまで培ってきた経験が生きてくる。
新しいものづくりに挑戦して、改めて気づかされたのは、長年積み重ねてきた経験と、受け継いできた伝統の技の確かさでした。
さて、何を作っているのか。
それは、もうしばらく秘密です。









