工房だより Staff

百年前の職人から、託された仕事

先日、約100年前に作られた春慶塗りの箪笥を修理させていただきました。

お客様のおばあさまがお使いになっていた箪笥で、「これからも大切に使い続けたい」とのご相談でした。

最初に写真を拝見した時は、正直「これは大変な修理になるな」と思いました。背板は剥がれ、引出しの底板も抜け、出し入れもガタガタする状態。それでも、お客様の思いを聞き、なんとかお役に立ちたいとお引き受けしました。

工房へ持ち帰り、実際に見てみると、傷みは激しいものの、とても丁寧な仕事が施された箪笥でした。
そして修理を進める中で、ある墨書を見つけました。

「飛騨國高山 製造所 岩瀬喜七」

約100年前、この箪笥を作った職人の名です。

これを見つけた瞬間、俄然、職人としてのやる気が湧いてきました。

この箪笥を作った職人の思い。嫁入り道具として大切に使ってきたご家族の思い。
そして、おばあさまの箪笥をこれからも使い続けたいというお客様の思い。

それらを感じると、「なんとか次の代にも使える箪笥に戻したい」と職人魂に火がつきました。

修理は、思っていた以上の大手術になりました。

背板は本体に嵌め込まれていたため、角金具を外し、木釘を一本一本切りながら慎重に取り外しました。

こういう時、昔の職人の手仕事には本当に感心します。鉄釘ではなく木釘を使い、手間をかければ分解して、また直すことができる。
百年後にも職人が手を入れられる仕事が残されていたのです。

縮んだ背板には木を足して寸法を整え、たわんだ本体も補強。引出しもすべて底板を外し、幅と奥行きを整えながら組み直しました。最後に引出しが気持ちよく動くよう調整しました。

 

表面は「今の風合いを残したい」というご希望でしたので、塗り直さず、目立つ傷や漆の剥がれだけをできる限り自然に補色しました。

そして先日、無事にお客様のもとへ。

箪笥をご覧になって、

「こんなに綺麗になって嬉しいです」

と言っていただきました。

百年前、飛騨高山の職人が作った一棹の箪笥。それを今、大阪泉州の桐箪笥職人が修理し、またご家族の暮らしの中へ戻していく。

古い箪笥を修理するという仕事は、壊れたところを直すだけではなく、
昔の職人の仕事と、その箪笥を大切にしてきた人たちの思いを、次の世代へつないでいく仕事なのだ。

今回、改めてそんなことを感じることが出来ました。

更新があれば通知する
通知タイミング
guest

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

0 コメント
古い順
新しい順 最も評価された順

関連記事

ショールーム・工房情報Showroom & Factory Infomation

ショールーム

ショールーム

〒596-0004 大阪府岸和田市荒木町2-18-5 072-443-8835 FAX.072-443-8837
E-mail : info@hatsune-kagu.com
定休日
毎週火曜日・第三水曜日
駐車場
前側2台・裏側5台あり

GoogleMaps

工房

工 房

〒596-0002 大阪府岸和田市吉井町1-19-8 072-443-5691 FAX.072-443-5692
E-mail : tanaka@hatsune-kagu.com
定休日
日曜・祝日
駐車場
4台あり

GoogleMaps

LINEで簡単お問い合わせ

田中家具製作所を「友だち追加」していただくと、桐たんす・桐小物・その他家具についてのご相談や、洗い替えを希望される桐箪笥の写真添付などをLINEで行うことができます。

桐箪笥のご購入、修理・再生のご依頼、ご相談

お電話でのお問い合わせ

072-443-8835

9:00~18:00 (毎週火曜・第三水曜を除く)

メールでのお問い合わせ

お問い合わせフォーム

お問い合わせフォーム