3年に一度の記憶仕事
先日、大阪府からのご依頼で
「山片蟠桃賞(やまがたばんとうしょう)」の賞状用の桐箱兼、桐額。
それを立てるための桐の盾を製作しました。
この賞は大阪の文化や学術に貢献された方々に贈られる、
大変名誉あるもの。
その賞状を納める額をご用命頂けることは、
本当にありがたいことです。
今回も、厳選した上質な桐材を用い、
ひとつひとつ丁寧に仕上げました。
とはいえ、このご依頼は3年に一度。
そのたびに
「どないして作ったっけ?」
と思い出すところから始まります。
大阪府から送られてくるのは簡単な仕様書だけ。
図面も残してないので、
頼りになるのは自分の記憶と見本となる賞状だけ。
ところが今回は、その肝心の賞状が、
保管していたはずの場所に見当たらず、
探し回ることに。
あちこちひっくり返して、
ようやく見つけたのがこの古い賞状です。
なんと平成4年と記され、
また、その賞状には「エドワード・G・サイデンステッカー殿」
と記されており、
父が「長すぎてわしには読めんわ」
と笑っていたのを思い出しました。
当時この額を作っていたのは父でそんな何気ないやり取りも、
今では大切な思い出です。
思えば、あの頃からずっと、
三年に一度この仕事を任せて頂いているのだと思うと、
感慨深いものがあります。

見えないところまで、きちんと仕上げる

桐たんす職人の支えの工夫
普段は桐たんすづくりが中心ですが、
こうした特別なご依頼もまた、
職人としてのやりがいを感じる仕事のひとつ。
受章された方の節目にふさわしい額となるよう、
美しく丁寧な仕事を心掛けました。

盾も桐箱に一緒に収納できるよう考えられています。
そして次回こそ、
賞状の保管場所をしっかり覚えておこう思います。
(毎回そうは思ってはいるのですが…)。

三年に一度のご注文。今回もいい具合に仕上がりました。